NPO法人かごしま子どもと自然研究所

君ならいつか空も飛べる(信じること)

2021/09/04

メスティンとこどもたち

学校に行ったら何の自慢にもならないのに、メスティン(一人分のアウトドア鍋)を使いこなせるようになりたくて、ひたすら没頭して、練習を繰り返した今年の夏。そんな中、手に余る大きさに扱いもおぼつかなく、米を研げば流れ出る量のほうが多かった一年生の男の子がいた。マッチも怖くて勢いよく摩れない。失敗も嫌で、訳もわからず不安で、ドキドキオドオド。やる前から毎回嘆いて泣いてばかり。できるようになった周囲の子どもたちが、いつのまにか彼を囲み、つかんだコツを惜しみなく伝授。やってあげては意味がない。だから、見守って励ますの繰り返し。練習を重ねて3日目、温かい声援の甲斐もあって、彼もようやく完全マスター。真っ黒こげになったメスティンに、負けず劣らず真っ黒に日焼けした弾ける笑顔で、最高の夏休みを終えた。

9月1日朝、登校時すれ違う近所の人たちが『なんだか、すごいお兄ちゃんになったねえ!』『力強い挨拶、してくれたよ!!』『元気でたくましい姿で見違えたわ!!』。一学期、ほぼ毎日メソメソ泣きべそをかいて、お母さんやお友だちの介添えがあってもなかなか登校できないでいた彼が、満面の笑みで一人で元気に校門をくぐった。そんな彼との再会を楽しみにしていた、9月最初の森。前日に学校のうんていから落ちてケガをし『せっかく自信をつけてきたところだったのに、お休み残念です😢(涙)』と保護者から連絡が入った。

その一報を聞いたとき(不謹慎と思われるかもしれないが)、彼の成長の過程を見てきた一人として、むしろ『よくやった!』と褒めてやりたい気持ちが大いに勝った。もしその場に出くわしていたら、感動で強く抱き締めていたに違いない。彼がこの夏自分の力で手にいれたものは、メスティンのスキルだけでなく『自信』だと確信していたから。

ここからは憶測だが、うんていを目の前にした時『できる気がした』もう一人の彼がいた。あれほどまでに怖かったうんてい、今までは到底近寄りがたかったが『よし!やってみよう』と思えたし、『できるようになりたい!』という気持ちが、ふつふつ沸き起こってきた。そして『きっと僕ならできる!』と、自分を信じて一歩を踏み出させた、精悍な顔つきの彼がそこにいた。

今回は失敗したかもしれないけれど、きっと君なら大丈夫。多少のブランクも問題ない。君が思えたのだから、いつか間違いなく『きっとできる!』。泣いてもいい、弱音はいてもいい。でも『あきらめない』のが君の強味。何度も何度も繰り返して、学校のうんていも自分の力でやりとげてほしい。この夏、メスティンを通じて自分と向かい合ったように。

まずはケガ、1日も早く治りますように。

1人、アウトドアの画像のようです
アウトドアの画像のようです
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