季節の手仕事、昔の道具を楽しむ(ジュニアクラス)
2022/04/27
子どもたちのままごと遊びの素材は、森にその時あるもの。『確実にある』とは限らない。季節が変われば種類がかわり、出てきたり、なくなったり、年によって増減もするし、分布も変化する。モノがあふれる時代にあって、自然素材は『もっと欲しい』とか『まだまだ食べたい』という、子どもたちの欲求どおりいかないのがいい。今しかないし、これしかないのだから。おまけに、目の前にあるものすべてを私たち人間だけで独占できるわけではない。他の生きものにとっての食べものだったり、その植物にとって大切な子孫になったりするわけだから。
ある春、年長の子どもたちがスタッフの目を盗んで、後輩たちを秘密のいちご野へ連れていった。『おいしいもの、あるからねー』と得意気。ところが、行ってみると数個しか見つからない。根こそぎとってはいけないというルールを知ってる年長は、悩んだ末、結局一つだけとって、他のは手をつけずに残した。その一つを、米つぶほどの粒までバラバラにして、年少の口の中に一人一人、一粒一粒入れてあげた。もらった年少たちは、不満を漏らすどころか、口々に『おいしい』『甘い』といって嬉しそうに微笑んだ。
野のものは、子どもたちのお腹をいっぱい満たすほど手に入らない。一方で、季節が巡るたび、大した世話もしていないのにちゃんと出てきて、私たちの心をたっぷり満たしてくれる。子どもたちは、そんな野のものと関わりながら、本当の豊かさとは何か、『足るを知る』とはどういうことか、知らず知らずのうちに体感していく。
菜の花やパンジーの色遊びが終わるころ、ヨモギ団子、野イチゴと季節が巡り、いよいよ、先日からカラスノエンドウのシーズンに突入。さやを摘んで豆を取り出し、小さな鍋でゆでたら、弁当のご飯にのせみんなで少しずつ頂く。エディブルな(ほんとに食べれちゃう)ままごと遊び。もちろん、全部とりつくすなんて、野暮なことをする子は一人もいない。それでもみんな、お腹も心も大満足
んん~春の味、自然の恵み。ありがたやありがたや